ホテル投資の「HMC」とは
ホテルは不動産投資の対象として関心を集めていますが、どのような「運営形態」を選ぶかが、投資の成否を分ける鍵となります。この記事では、外資系ブランドホテルなどで見られる「HMC」という運営方法の基本的な仕組みについて、わかりやすく解説していきます。
HMCの基本的な仕組み
HMCとは「ホテル・マネジメント・コントラクト」の略称で、ホテル運営の契約方式の一つです。ホテル事業は、大きく分けて資産を持つ「所有」、事業全体に責任を持つ「経営」、そして日々の業務を行う「運営」の3つの役割で成り立っています。
HMCの最大の特徴は、投資家が「所有」と「経営(事業リスクの負担)」を担い、専門知識が必要な「運営」の実務のみをホテル運営会社(オペレーター)に委託する点にあります。
投資家と運営会社の役割分担
この方式では、投資家(オーナー)が土地や建物、開業資金などを提供し、事業から生じる全ての経営リスクを全面的に引き受けます。
一方で、運営会社はブランドや運営システム、人材などを提供し、オーナーの代理人として効率的なホテル運営を行います。原則として運営会社は自己資金を投下しません。つまり、投資家は事業の主体であり続けながら、運営の実務はプロフェッショナルを「雇う」形をとるのです。
お金の流れと運営会社への報酬
HMCにおけるお金の流れは透明性が高いことが多く、投資家はホテルの詳細な収支を把握できるのが一般的です。ホテルの総売上から人件費などの運営費用を引いた運営総利益(GOP:Gross Operating Profit)が、ホテル現場の収益力を示す重要な指標です。運営会社には、このGOPから運営の対価として「運営委託料」が支払われる仕組みです。
運営委託料の仕組みと注意点
運営会社への報酬は、主にホテルの総売上に対して発生する「基本報酬」と、利益(GOP)に応じて支払われる「インセンティブ報酬」の2種類で構成されます。投資家が注意すべきは、この「基本報酬」の存在です。ホテルが赤字であっても支払い義務が生じる場合があります。運営会社にとって基本報酬は安定収入ですが、投資家は業績不振時にこの支払いが負担となる可能性を理解しておく必要があります。
HMCのメリットとリスク
HMCを選ぶメリットは、市場が好調な時にホテルの営業利益の大部分を投資家が享受でき、大きな収益を期待できる点です。世界的なホテルブランドの運営ノウハウやグローバルな予約網を活用できるため、運営経験がない投資家でもホテル事業に参入できます。裏返しに、市場の悪化などで業績が不振に陥った場合、その損失はすべて投資家が被る点がリスクです。
他の運営方法との簡単な違い
ホテル投資にはHMC以外にも、投資家が施設を貸して固定賃料を受け取る「リース方式」などがあります。リース方式は、ホテルの業績に関わらず収入が安定する反面、業績が好調でも固定賃料以上の収益は得られない、リスクもリターンも低い方法です。HMCはリース方式とは対照的に、事業リスクを全て負う代わりに大きな収益を狙える、ハイリスク・ハイリターンな投資手法です。
ホテル投資の手法として理解を深めましょう
HMCは、ホテル運営の専門知識を持つパートナーの力を借りながら、事業の経営リスクは自ら引き受け、高いリターンを目指す投資手法です。運営を任せられる利点がある半面、投資家には運営会社を適切に監督し、事業全体の舵取りを行う積極的な姿勢が求められます。
ホテル投資を検討する際は、ご自身の投資スタイルやリスク許容度に、このHMCという方式が合っているかを見極めることが重要です。




