土地信託とは?そのメリットと注意点
土地活用の方法の1つとして、「信託」があります。土地信託とはどのような仕組みで、どのような流れで利用するのでしょうか。メリットや注意点とともに、詳しく解説します。
土地信託のメリット
土地信託とは、自分の土地を「信託銀行」や「信託会社」などに信託することで、自分の代わりに運用してもらうことです。地主は、その収益の一部を配当として得られます。
その仕組みは、自分の「お金」を信託する「投資信託」に似ているといえるでしょう。土地信託のメリットについて、具体的に解説します。
1.管理の手間がかからない
土地信託では、土地の管理や運用方法の選択を信託銀行に任せるので、地主側(委託者)には手間がかからないのがメリットです。
自分で土地を活用する場合、「どんな建物にするか」「どのように管理するか」など、収益を上げるために、さまざまな工夫をする必要があり、手間がかかります。
この点、土地信託なら、信託銀行が自分の代わりに収益を出すための工夫をしてくれて、管理まで対応。地主が自分で土地を管理・運用する必要がないのです。
仕事が忙しくて、土地活用のために時間を割けない人などにとっては、便利な土地活用方法の一つといえるでしょう。
2.資金調達が要らない
土地にマンションなどを建てて活用する場合、最初に大きな資金を借りるなどして、「資金調達」が必要です。自分で土地活用する場合には、自分が契約者となってローンを組むことになります。
しかし、土地信託の場合は、自分で運用するわけではないので、そのような資金調達をする必要がありません。
マンションなどの大きな建物を建てて運用する場合でも、信託会社が代わりに契約者となってローンを組み、資金調達してくれます。
信託会社や信託銀行の高い信用力を利用できるので、ローンの条件が有利になりやすいのもメリットです。
3.土地が建物付きで戻ってくる
土地信託では、契約の満期になると、信託した土地が自分のものとして戻ってきます。
この際、信託会社が土地に建設したマンションなどの建物も一緒に戻ってくるのがメリットです。
この建物はそのまま売却して換金することもできますし、そのまま自分で賃貸物件としての運用を続けて、家賃収入などを得ることもできます。
このように土地信託は、「資産形成」にもなるというメリットがあるのです。
4.相続税対策になることがある
土地信託は、「相続税」の対策として、税金の負担を減らすためにも活用できます。
土地を、自宅用の「自用地」として所有したり、建物がない状態で所有したりするよりも、賃貸マンションやアパートを建てて「貸家建付地」とした方が相続税の節税になることは、よく知られています。
そのため、節税のために自分でローンを組むなどしてアパートやマンションを建てる地主もいます。
土地信託を利用すれば、自分でローンを組まなくても信託会社が土地に賃貸マンションやアパートを建ててくれて、土地が「貸家建付地」になることによる相続税の節税効果が得られるのです。
土地信託の流れ
土地信託を始める場合、どのような流れで手続きをするのでしょうか。具体的に、土地信託を開始してから契約終了までの流れをチェックしておきましょう。
1.信託銀行や信託会社と契約する
土地信託を始めるために、まずは信託会社や信託銀行と「信託契約」を結びます。
信託銀行とは、通常の銀行業務をしながら「信託業務」も行っている銀行のことで、「みずほ信託銀行」「三井住友信託銀行」など、大手銀行グループに属する会社として存在していることが多くあります。
また、銀行ではなくても土地信託を扱っている信託会社があります。例えば「大東みらい信託株式会社」「スターツ信託株式会社」などです。
信頼できる信託銀行や、自分にあったサービスを提供している信託会社を探すためにも、その会社がどんな物件を専門としているのか、自分の土地のような物件を扱った実績があるかどうかも確認してください。
契約すると、土地の所有権が信託銀行や信託会社に移りますが、その代わりに「信託受益権」を得ます。信託受益権とは、信託によって家賃収入などの利益を得る権利です。
2.運用開始
信託する会社を選んで、信託契約を結んだら、土地の運用がスタートします。
その土地にどんな建物を建て、どのように資金を調達し、どのように管理するかなどの業務を全て行ってくれるので、運用に関して地主が何かをする必要はありません。
賃貸マンション・商業施設など、さまざまな選択肢の中から、その土地に適したものを信託会社が選択し、プロの知識を使って運用してくれます。
建設のためにローンを組む必要があるなら、信託会社が契約者となってローンを組み、資金調達を実施。入居者を探すために広告を出すなど、必要な業務は全て信託会社がやってくれるので、地主がすることはありません。
入居者が入って家賃収入が入ると、それを信託銀行や信託会社が一旦、受け取ります。
3.配当をもらう
信託会社や信託銀行が土地を運用して、結果として得られた収益の一部を、地主は配当として「月に1回」などの頻度で受け取ります。
配当は、賃料収入などの収益から「運営コスト」と「信託報酬」を差し引いた金額です。
「運営コスト」には、信託会社がローン返済をするための費用や、管理費用、固定資産税などが含まれています。
「信託報酬」は、信託銀行や信託会社に支払う手数料のような位置づけです。契約内容によって異なりますが、運用利益の5~20%などの金額を、報酬として信託会社に支払います。
4.信託契約の終了
土地信託の契約には「満期」があり、10~30年ほどの期間で満了を迎えます。
信託契約が終了すると、土地が地主のもとに戻ってくるだけでなく、信託銀行や信託会社が建てた賃貸マンションなどの「建物」も一緒に、自分のものとして受け取ることになります。
マンションなどを建てるために信託会社が組んだローンが残っている場合は、その「ローン残高」も一緒に、地主が受け取ることになります。
状況によっては、信託契約を延長したい場合もあるでしょう。その場合は、信託会社と相談して、その後の対応を決めることになります。
土地信託の知っておくべき3つの注意点
土地信託は良いことばかりではありません。土地信託について、あらかじめ知っておくべき注意点・リスクについて確認しておきましょう。
1.費用の負担は必要
土地信託は資金調達が不要で、信託会社に運用を任せられるとはいえ、その「費用」を一切、負担しないわけではありません。
前述のとおり、固定資産税などの管理費は、配当から差し引く形で地主が負担することになります。
ローンについても、自分では契約しないというだけで、間接的には、配当から差し引く形でローンを返済が行なわれています。そして、信託会社に支払う「信託報酬」も必要です。これは、自分でマンションを建てて運用した場合には必要のない出費です。
土地信託は手間がかからない分、「出費が増える」ということは意識すべきでしょう。
2.利益が出るとは限らない
土地信託は「確実な収益」を約束してくれる契約ではありません。
信託会社という専門家が土地を運用してくれるからといって、「絶対に利益が出る」と言い切れる物件は存在しません。土地活用において、リスクがゼロになることはないのです。
空室が増えるなどの原因で、運用による利益が少なくなれば、配当金額は当然少なくなり、場合によっては「収益なし」、もしくは管理費用の方が大きくなって「赤字」になる可能性もゼロではありません。
土地信託によって得られる配当は、信託会社の質やスキルによっても差が出ます。配当には変動があるリスクを把握したうえで、土地信託を依頼する会社をよく選び、会社と契約する必要があるのです。
3.信託できない土地もある
「どんな土地でも」信託契約に利用できるとは限りません。
信託会社が代わりに土地を運用してくれるということは、信託会社が「この土地は利益が出せる」と判断してくれなければ、信託契約に応じてもらえないということ。広い土地や、住宅ニーズの高いエリアの土地、人通りが多い土地など、収益が見込めるような土地であるほど、信託に向いています。
逆に、狭い土地や、ニーズの低いエリアの土地など、信託に不向きな土地もあるという点を把握しておきましょう。
自分の土地が信託に向いているかどうか判断できない場合、信託会社などの専門家に問い合わせることをおすすめします。